建物の中央にある第一階段(地図㉟)は1階の客間から2階の家族の居室へと通じる階段です
この建物は華やかな1階の客室を主にフランス人デザイナーが担当したのに対し
生活の場である2階は宮内省内匠寮の技師たちが落ち着きのあるデザインを手がけました
階段のステップ、腰壁、手すりは外国製大理石のビアンコ・カラーラをはじめ3種類の大理石が用いられています
手すりのデザインはアール・デコの特徴であるジグザグのラインが強調され
はめ込み金物はブロンズ製銀イブシ仕上げです
照明柱はアール・デコ特有のパターン化された花模様です
照明柱の付け根の部分には花を飾ることができるように水盤が備えつけられています
2階の地図
二階広間(地図⑲)は主に宮内省内匠寮の技師によってデザインされました
当時としては珍しい自動ビアノが置かれご家族団らんの場として使用されました
窓の下には作りつけのソファがあります
二階広間の天井照明も花模様です
若宮寝室(地図⑳)は北東の角に位置し二方向から光を採って開放的な空間になっています
朝香宮家には2人の若宮がおられ若宮寝室、合の間、居間の3部屋を使用されていました
東側に張り出した窓のスチールサッシは竣工当時のものでF型開き窓と呼ばれる日本で最も古い形式です
各部屋の照明は宮内省内匠寮技師「水谷正雄」がデザインしたものです
合の間(地図㉑)は寝室と居間の間に位置します
白漆喰のヴォールト天井と照明
若宮居間(地図㉒)
漆喰の天井は美しい円形の左官仕上げ、ステンドグラスによるペンダント照明が下げられています
書斎(地図㉔)は正方形の隅に飾り棚を設置する事により室内を円形に仕上げています
この部屋はアンリ・ラパンがデザインしました
シトロニエ材の付け柱が四方に配置されています
書斎の隣には書庫(地図㉓)が配置されています
部屋に展示されていたコレクション
「アドリアン=オーギュスト・デュラック」セーブル製陶所 牡鹿図皿(デザイン1931製作1934)(左上)
「フェリックス・オベール」器形デザイン「ロジェ・シヴォー」絵付 セーブル製陶所
花文花瓶対(1927)(右上)
「ルネ・ラリック」カーマスコット≪勝利の女神≫(1928)(左下)
「ルネ・ラリック」電動式置時計≪野ばらの花≫(1926)(右下)
殿下居間(地図㉕)この部屋もアンリ・ラパンのデザインです
ヒノキ材の付け柱、大理石の暖炉と鏡が備え付けられています
壁紙とカーテンは2014年に建設当時の物を復元したものです
ラジエーターカバーはアール・デコによく見られる噴水がモチーフとして使われています
殿下寝室(地図㉖)居間や書斎と比べると装飾は控えられています
柱と扉には樟が使われており、4か所の扉には樟の玉杢が装飾として使用されています
玉杢とは樹木の瘤のある面をスライスすると現れる比較的大きな同心円形の模様の事です
第一浴室(地図㉗)
この浴室は御夫妻専用として作られました
交通事故で足がご不自由になられた殿下を気づかって寝室から一番近い場所に配置されました
床には山茶窯(つばきがま)製陶所製のモザイクタイル
壁にはフランス産の大理石「ヴェール・デ・ストゥール」が使われています
浴室は1階大客室のちょうど真上になるため水漏れを心配したラパンから設計の見直しを求められましたが
床に何層にも防水層を施したため水は一度も漏れませんでした
朝香宮邸では他に姫宮用の第二浴室、若宮用の第三浴室があります
妃殿下寝室(地図㉘)楕円形の鏡のついた白いドア
上下に移動のできる布シェード付きの照明など女性らしい雰囲気に溢れる部屋です
ラジエーターカバーは妃殿下ご自身がデザインされたものです
妃殿下居間(地図㉙)
やや浅めのヴォールト天井に取り付けられた5つのボール状の照明は
各部屋ごとに意匠を凝らした照明の中でも特に大きく際立ったものです
1枚ものの大きな鏡、実用的な造り付けの棚や開き戸など妃殿下の趣味嗜好が伺えます
お部屋からパティオ(中庭)が見えました
ベランダ(地図㉚)
建物の南側にあるこのベランダからは芝庭や日本庭園が一望できます
殿下、妃殿下の居室のみから出入りのできる御夫妻専用のベランダです
国産の白と黒の大理石が市松模様に敷き詰められています