朝香宮邸として1933年に建てられた東京都庭園美術館
本館は鉄筋コンクリート造、外壁はリシン掻き落とし仕上げの建物です
地上3階、地下1階で延床面積2100.47㎡です
設計者は宮内省内匠寮工務課です
1階の地図です
正面玄関(地図①)に入るとガラスレリーフの扉が目に入ります
ガラス工芸家「ルネ・ラリック」(1860-1945)の作品で朝香宮邸の為に新たにデザインされたものです
翼を広げる女性像は型押ガラス製法で作られています
床全面は細かい天然石で作られたモザイクで古代エジプトの幾何学模様をイメージしています
デザインは宮内省内匠寮技手の「大賀隆」さんです
朝香宮邸に招かれた人が最初にとおされるのが大広間(地図③)です
宮邸時代は親しい人々が集まりこの部屋でダンスを踊られたそうです
壁面にウォールナット材を使用し、天井には格子縁の中に40個の半円球の照明が配置されています
階段横の大理石のレリーフは
彫刻家、画家の「イヴァン=レオン・ブランショ」(1868-1947)の作品≪戯れる子供たち≫です
小人数の来客の際に使用された応接室の小客室(地図⑧)の四方の壁面には
フランスの画家、室内装飾家、デザイナー「アンリ・ラパン」(1873-1939)の油絵が張りめぐらされています
淡いグリーンを基調として描かれた樹木と水のある風景です
テラスに通じる扉の上部に「H.RAPIN」のサインがあります
マントルピースの石材はギリシアで産出される蛇紋岩「ティノス・グリーン」が使用されています
マントルピースの上にはロイヤル・コペンハーゲンの三羽のペリカン(ペンギン)1902年が飾られています
朝香宮ご夫妻がパリから帰国される時に持ち帰ったものだそうです
南側のテラスに面した次室(地図④)は大広間から大客室へのつなぎの役割をもっています
白磁の香水塔はアンリ・ラパンが1932年にデザインし国立セーブル製陶所で製作されたものです
この塔は室内用噴水の機能を持ち、上部の渦巻き模様の装飾は照明になっています
妃殿下の工夫で来客の際に照明の熱で香水を気化させ香りを漂わせたことから香水塔と呼ばれるようになりました
鮮やかなオレンジ色の壁は人造石でプラチナの箔を埋め込んだ贅沢な造りになっています
旧朝香宮邸の中でも最もアール・デコの粋が集められているのがこの大客室(地図⑤)と大食堂です
当時大勢の来客をもてなす時に使用されました
イオニア式の柱頭をもつ柱にはシコモール材が使われ
天井にはシャンデリアを囲む漆喰仕上げの円や石膏によるジグザグ模様が施されています
大客室から見た次室
壁面の上部を囲む木製ボードに描かれた壁画は「アンリ・ラパン」作
ルネ・ラリック製作のシャンデリア≪ブカレスト≫
植物の葉が機械の歯車のように表され、上部の花の中には24個の電球がはめこまれています
扉上部のタンパン装飾は鉄工芸家「レイモン・シュブ」(1893-1970)作
銀引きフロスト仕上げ(つや消し加工)のエッチング・ガラスをはめ込んだ扉(北側)は
画家、ガラス工芸家「マックス・アングラン」(1908-1969)作
大客室の扉は4面あり東と西側はチューリップ、北側の2か所は芥子の花がデザインされています
ラジエーターカバーは宮内省内匠寮の技師がアール・デコ様式に和風モチーフを取り入れてデザインしたものです
南に庭園をのぞみ大きく円形を描く張り出し窓のある大食堂(地図⑥)は
来客時の会食用に使用された部屋です
ルネ・ラリックの照明器具≪パイナップルとザクロ≫
ラジエーターカバーは魚貝がデザインされています
暖炉の上の壁画は「アンリ・ラパン」の作で赤いパーゴラと泉が油彩で描かれています
植物文様の壁面は「レオン・ブランショ」のデザインです
このレリーフはコンクリート製でフランスから送られてきた時にヒビが入っていたため
日本で型を取り石膏で作り直し灰銀色の塗装が施されました
朝香宮一家の日常の食事に使用された小食堂(地図⑩)
西洋スタイルの朝香宮邸の中にあって珍しく和の要素が取り入れられたお部屋です
柱や付鴨居、長押など造作材の多くにヒノキが使われています
床はローズウッド、黒檀、ケヤキを使った寄木張り、天井は秋田杉を使用した平組格天井です
床板にケヤキを使用した床の間など木材を多く使った作りとなっています